道南(転)

f0022103_19105979.jpg
苔むした岩が流れのあちこちから顔を出している写真は、我々の釣欲をそそるには充分すぎる。
道南の渓流釣りのフィールドでも有名とされる渓だ。
以前、知人に道南を案内してもらった折り、時間的な都合で訪れることが出来なかった渓。
その時の事前情報で、北海道の釣りの写真として送られてきたCDには、何十枚もの写真が収められており、その中にあった苔に覆われた飛び石や無造作に岸に横たえられた渓魚の写真は、何年か後の今でも脳裏からはがれ落ちることがなかった。
いよいよその雰囲気たっぷりの場所に車を進めることができるのだ。 狭い林道を走り上流部を目指す。 林道のカーブをまがると突然その川の支流が横切っていて林道が寸断されていたりして野趣たっぷりだ。 
林道の脇道を探索しながら車をすすめ、川を横切る橋の上に出た時、ふと上流部を見れば、脳裏の壁紙と化したあの風景が広がる。
なんとか川に入ろうとアプローチするが、入渓点がはっきりしないのと、水量の増加で入渓がままならない。 上流部のダムで水を流しているか、雨によるものかははっきりしないが、見るからに増水しているようだ。
そこで、少し下流の流れに足を入れることにした。残念ながらこちらの流れはありふれた渓相で、源流の雰囲気は微塵もない。
渓はヤマメとイワナの混在している部分らしく、私には愛嬌のあるイワナが姿を見せてくれた。
今回は、苔むした岩の上に立つことは叶わなかったが、いつかは・・・という思いで宿舎に向かった。 




f0022103_19185627.jpg
国道をハイスピードで走っていると、見落としそうな場所に林道の入り口がある。
車を林道に乗り入れ、崩落の痕跡である崩れ落ちた岩を避けながら、奥へ奥へと進むと、いきなり林道が消え失せた。
林道の終点のように見えるその場所は、大崩落により林道が寸断されていたのだが、崩落の岩場は長い年月の経過により雑草で覆われ、あたかも林道が消えたように見える。
その手前に車を止め、藪を進み川に下りれば、うっそうとした樹木におおわれたイワナの住処。
釣り上がりの釣りを始めると、ポイントでは教科書のごとく反応が見られるのが嬉しい。 
堰堤には、大物が潜んでいるに違いないという期待を抱かせる何かがある。
その期待を込めたキャストに乗ったフライを流れだしの水流に乗せたり、巻き返しの反転流に浮かべたりして様子を見るが、期待ほどの反応はなく、かわいいイワナがフライを銜えてくれただけ。
そこで、浮力の高い発泡スチロールをフローター&インジケータにしたフローティングニンフをティペットに結び、堰堤を流れ落ちる水の壁にぶつける。
水の壁を下ったフライは、もまれるように白泡の中に消え、見えなくなる。
その間に忙しくラインを手繰っていると、白泡の中に発泡スチロールに塗ったオレンジ色が確認できた。
流れに乗りつつ、浮き上がろうとするフライが水面に顔を出した刹那、水中に引き戻されるようにスッと消えたように見えた。
瞬間的にロッドをたてると、根掛かりかと思うほどのテンションが手元に伝わってきた。
確実なフックアップをものにするため、ロッドはそのまま保持しつつ、ピッとラインを引きテンションを掛けるとロッドのティップに振動が伝わってきた。 今度はゆっくりラインを手繰ると、ティップが水面に引き込まれそうな勢いが伝わってくる。
小さくはないと思ったが、やりとりの最中には「尺」には届かないと感じた、しかしランディング後、沢好坊さんがメジャーをあてると30の目盛りの位置に尾鰭の先端があった。

堰堤で区切られたエリアを抜け出ると、比較的開けたフリーストーンの流れが続く。 その最終堰堤から上流部にかけてはさらに魚影が濃くなるという話を聞いていたので、林道から川を見下ろしてみた。 すると思わず一歩後ずさりする光景が目に飛び込んできた。
実は、この渓に入ってすぐ、林道の中央にこんもり盛り上がった動物の排泄物を確認していたし、堰堤に向かって釣り上がる際にもかなりフレッシュな排泄物を見ていたのだ。 さらに堰堤右岸よりにはケモノ臭が漂い、野生動物の存在を「これでもか」と感じさせる要因がゴロゴロしていたのだ。
そしてその時私が見た光景は、林道の10mほど下を流れる川の対岸のブッシュから飛び出る黒い影。 もちろん四つ足だ。 ただ、頭の中にある羆のイメージよりはずいぶんスリムで、大きめの犬に見えないこともない・・・が、頭が異様に大きく見えた。
あとから沢好坊さんに「どうしてデジカメ取り出さなかったの?」とツッコミを入れられた私の取った行動は、思いっきり笛を吹くことだった。 笛の音が渓に鳴り響くとほぼ同時に、反転した黒い影はブッシュに消えた。
羆の駆け込んだ位置から堰堤を挟んだ下流で釣りをしている沢好坊さんに無線連絡を入れると、間髪を入れずに「帰りましょう」と返答があった。
林道から見下ろす渓の魅力的な流れを後にした私たちは、来年以降の再訪を約束し、車に乗り込んだ。
by s_1046 | 2006-07-11 19:21 | 釣行レポート
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31