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カテゴリ:釣行レポート
薫風

日常が平坦になってきてどれほど経つのだろう。齢を重ねるにつれ大きな出来事もなく、どんどん日が進んでいく。一年などあっという間だ。そんな日常に流され、気がつけば釣りのシーズンも半ばだ。私以上に腰の重い友人を連れ出すべく、釣友のgaryさんと打ち合わせて連絡を取りあい、穴グラから出てこない友人と三人で木曽の高原を流れる川に出かけることにした。
ところが行くと決まると、早朝の4時半だの5時だのと言う時間を指定され閉口する。薫風の候とはいえ、その日の最低気温が3℃に満たない高原の川で早朝から虫が羽化するとは思えず、「ちょっと早いんじゃない?」という言葉を飲み込んで、さらに日課である犬の散歩ができないため、犬に平謝りしつつ家を出る。
道中は色々な話題で盛り上がり、単独釣行の時よりも所要時間がかなり短く感じる。
霊峰をながめる事の出来る場所でウェーダーに着替え、準備を済ませると三人が分かれて入渓。他の二人はいざ知らず、私の流すフライはただ無情に流れるだけ。何一つ反応もない。折れそうになる心を上流にある堰堤までは・・・と何とか支えながら、後ろを振り返るとgaryさんが岸辺を散歩している。心が折れたな(笑)。とうとう最後までなんの反応もないまま車に戻り、南からの穏やかな春風と、暖かな日差しを背中に受けてアスファルトに座り談笑。盛夏ならとても出来ないホノボノとした風景だ。

少し早いが下流部に移動して蕎麦屋に行くことにした。この蕎麦屋については別の場所に記すが、早く行かないと「幻の蕎麦」を食べることが出来ないという事情と、早く起きたので腹が減ったという事情がタイムリーに重なり、幸甚にも一日10食限定の蕎麦を胃に収めることが出来た。

蕎麦屋に入るときに脱いだウェーダーを再び身につけ、蕎麦屋の裏を流れる川に入渓。流程は長いが、分散して入渓するために移動する体力に自信がないので(笑)交互に釣ることにする。「ライントラブルで交替ね〜」などと冗談半分で・・・というより冗談でなく本気で、すぐにライントラブルで交替だと思って準備してた私の目前で、沢好坊さんの流したフライに飛沫が上がる。「なぜ合わせないの?」と疑問が脳裏をかすめるくらいの時間をおいた後、魚が水中で白い腹を見せる。沢好坊さんはと見れば、ラインをたぐりながらゆっくり竿先を上げている。garyさんと「こりゃ釣れちゃったというヤツだな」とうらやましさ半分で話しつつ、沢好坊さんが釣った魚など確認することなく、二人してザブザブと川の中へ・・・とても面白い。

そうこうしているウチに私のフライにもアタックあり。きちんと合わせてランディングして、さてどこで写真撮ろうかとウロウロしていると、上流のプールと対峙しているgaryさんが、デカイのがライズしていると合図で示す。自分の釣った魚の撮影どころでなく、デカイ魚を釣ったgaryさんを撮影しなくてはと、適当に魚の撮影を済ます。



スプラッシュライズと奮闘中のgaryさんは残念なことにロッドを満月のようにしならせた写真を私に与えてはくれなかった。結局残ったのは美的ではなく、証拠というだけのイワナの写真だ。とても哀しい・・・(笑)。

でもああだこうだと話ながら釣りしてると疲れも和らぐような気がする。よって、次回釣行も三人でワイワイと出かけることに決定!
でも集合時間がさらに早くなるんだろうなぁ〜。
by s_1046 | 2012-05-20 19:40 | 釣行レポート | Comments(6)
悲鳴
今シーズンの初釣行、快晴の青空の下、心地よくロッドを振り、いい型のアマゴをいくつか釣り上げていると、渓に響き渡る悲鳴。


明らかに若い女性の叫び声だ。上流方向から聞こえるが、その方向は右に大きく蛇行していて声の主の確認は出来ない。全力で遡上してみると、左岸にある砂の堆積した場所でフライロッドを持った若い女性が立ちすくんでいるのがわかる。
近くによって「どうしました?」と聞く私の私の足下にはとぐろを巻いた蛇が・・・。

その後は、初めての単独釣行だという彼女と一緒に釣りを楽しみ、次回の釣行の約束を・・・「悲鳴」というタイトルのメデタイ話・・・ではない、残念なことに。

「悲鳴」は、身体のなまった、事実上はジイサンであるオッサンがシーズン初釣行で、身体の節々が痛くなり悲鳴を上げた、さらに釣果ゼロ、いわゆるボーズという読むに耐えない話なので、ブラウザの「戻る」ボタンをクリックしたほうがいい。


さて、ここからがホントの釣行記。女性が少しだけ登場しますがおそらく80代(笑)。

高気圧と低気圧が目まぐるしく入れ替わるこの季節は、雨の日が続いたかと思うと気温が夏日を示し、その翌日には再び風の強い雨交じりの日に急変したりと忙しい。

この日も釣友の三岳クンが私の休みに合わせる形で休日が取れたことを報せてくれたのが、およそひと月前。釣行予定日を楽しみにしながらボツボツと準備を始める日々。そして釣行当日は幸いにも晴れから曇りの予報。とはいうものの、山間の気温はまだ低く、春が訪れたとは言いがたいので、上流部はまだ時期尚早と考え、目的地をいつもの川の下流部分に決め、現地に到着した。

暖かな日差しを受ける岸沿いの畑では老婆が腰をタタキながら畑仕事をしている。準備を整え、老婆と時候の挨拶を交わし、現地で漁協支部長を務めるH氏のお宅の前を通ると、幸いにもH氏は川の様子を眺めるために外にいた。すわ、情報収集とばかりに色々聞こうとした私の機先を制するように「フライはまだ無理」。自信を持って決然と言い放つ。少しだけ肩を落としつつも銀色の魚体を手にする妄想を抱き、入渓。


渓に立つ三岳クンは、以前とは比べものにならない姿形で、ムムム・・・とうなるほどサマになっている。私のあげたウェーディングシューズに、同様のランディングネット、またまた同様のフライベスト(笑)。それだけじゃなく、以前は前後でパチンパチンと音を立てていたキャストも、美しいナローループを描いている。たいしたもんだ。

私の方といえば、ベストを着た直後から背骨がきしむ。軽量化を図るために事前に吟味して必要最小限に留めたはずなのに、ベストが重い。渓の中を歩いているウチに腰が痛み出した。さらに古傷の膝、以前骨折した右足と伝染するように痛みが広がる。明らかに老化と運動不足が原因で、帰ったらサプリを飲婿とを考え、このエントリーのタイトルを「皇潤」にでもしよう本気で思った。

たいして高度差のある渓でもなく、ゆっくりと釣り上がる三岳クンに合わせてのペースだったので、ガシガシと距離を稼ぐ釣りでもないのにこの体たらくだ。ナサケナイやら悔しいやら。

それでもまだ魚が釣れれば気が晴れるが、支部長のH氏の言い放った一言は間違ってはいなかった。しかし、二度だけアマゴとわかるアタックがあり、ロッドにわずかな手応えを得たがそれまで。その二度のチャンスのうち片方だけでもものにしていれば「快釣」とかいう、全然違う釣行記になっていたのにと空目。

空を見上げれば雲ひとつない青空であるものの、予報は下り坂。その証左にだんだんと風が強くなる。特に渓を抜ける風はときに岩に立つ人間をふらつかせる程になってきた。キャストもままならず、狙ったところにフライを置くことが困難な状態で、ドライフライの先にニンフを結ぶトレーラーシステムで流芯を流してみたりするが功を奏さず。もちろん、身体各部からの悲鳴は止むことはない。正直言ってギブアップ状態だ。見上げると快晴だった空も雲で覆われ、ハッキリ見えていたアルプスも視認できない。
ロッドオフ。

帰宅するなり今度は筋肉が悲鳴を上げ、未だかつて攣ったことのない前頸骨筋といわれる向こうずね外側の筋肉が固まった。一夜明けてそれらの悲鳴は消えさり、鈍い筋肉疲労が残るだけで、もう二度と行くものかとは思わないけど、何らかの対策は必要だなと痛切に感じる。年齢が一回り以上若い三岳クンに尋ねると、ロッドを振りすぎて上腕の筋肉痛だけと・・・シンジラレナイ。ウラヤマシイ。
by s_1046 | 2012-04-26 20:04 | 釣行レポート | Comments(6)
色白
諸般の事情から仕事が忙しくなる6月以降。多分一日を通してフリーでいられるのは今日だけかも知れない。しかしなぜだか釣行へのテンションが上がらず、いつものように起きて、いつものようにワンコの散歩。心の中では釣りに行こうか、それとものんびり温泉にでも行こうかと逡巡し、おそらくこのままなら釣りに行くことはないだろうな・・・という心模様で朝食のテーブルにつき地元スポーツ新聞をながめる。昨夜の日本代表サッカーの記事を斜め読みし、紙面をめくっていくと美しいタナビラ(アマゴ)の写真が目に飛び込んできた。それは長野県の木曽にある開田高原の釣り情報の記事だった。これが釣行へのトリガーとなったことは言うまでもない。そうでなければこうしてブログを書いているはずもないのだから。「ポチッ」とスイッチが入ってから恐らく15分後には「行ってきま〜す」と家を出たはずだ。

家を出て、木曽へと車を進める。しかしハッキリとした目的地がある訳ではなく、取りあえずは開田高原に向かうつもりだった。あの写真のようなタナビラを釣るのだ・・・と。

木曽では昔からアマゴのことをタナビラと呼ぶ。語源は掌(てのひら)から来ているという節が有力なようで掌平魚とも記すらしい。要は掌のように体高があるということらしいが、私自身がタナビラから受けるイメージは「美しい」だ。いろんな場所でアマゴを釣るが、美しさでは木曽のタナビラに勝るものは無いとすら思っている。

車を進めるうち、木曽のタナビラの中でも特に美しいタナビラが釣れる渓が思い浮かんだ。その渓はホームリバーといっても良いくらい通った場所。木曽川の支流の支流で、今年はまだ支流部にしか入渓していない。勿論偵察は済ませてあるので、そろそろタナビラが顔を出してきてもおかしくない感触は得ている。
現地に着くと林道のゲート前にはすでに先行者の車が二台止まっており、先行者の存在を示唆していた。もちろんこれも織り込み済みなので、少し下流部から入渓し、ゆっくりと釣り上がることにする。この渓のタナビラは色白で、言ってみれば美白タナビラだ。その姿を思い浮かべつつロッドを振りラインを運ぶ。
すると水深のあまりない緩やかな流れの瀬尻で、#16ブラックパラシュートを追いかけるような形で煌めきが水面を割った。数日前の釣行でバラシの連発で自己嫌悪気味だったので、魚の生命感を楽しみながらゆっくり寄せることはせず迅速にネットイン。

ネットの中で踊るのは、色白ではあるがイワナ。幼さの残る少しばかりトボケた顔立ちで愛嬌たっぷりで憎めないやつだ。

釣り上がっていくとわずかに水量が多いが、随所にポイントが現れる。まだ強い流れの中から姿を見せてくれる時期ではないので、緩やかな流れを中心にフライを流していく。あきらかにタナビラ狙いの流し方をするが反応がない。そこでイワナ狙いのポイントを狙うと反応がある。ところが、というかやはりというか、釣れてくるのはイワナだ。そこで、反転流や止水と見まごうような緩い流れを流していくと、水中から吸い込むような捕食動作でフライを咥える魚が来た。

取り込みにも成功し、ネットに横たわる魚を確認。間違いなく色白なタナビラだ。色白というより美白。透き通るような背鰭も尾鰭も美しい。欲を言えばもう少しサイズが大きければ完璧だ。

サイズアップを狙って魚止めの滝まで釣り上がり、カウントアップは成るもののサイズアップは成らず。
by s_1046 | 2011-06-08 22:55 | 釣行レポート | Comments(9)
爆小
数日前の雨の日、友人達が連れ立って釣りに出かけた。最初それを聞いたときには「ウソでしょ〜」と取りあわなかったほどの傘マークひとつだけの天気予報。しかし「爆釣だった・・・」という釣果報告を聞いた直後には、不確定だった釣行目的地がほぼ決定。前日には同行者の沢好坊さんと出発時間などについて打ち合わせ。午前5時のピックアップをお願いして釣行準備にとりかかるが、爆釣の文字が頭の周りを飛び交っていることが自覚でき、ついついニヤケてしまう。釣り人は「爆釣」とか「イレグイ」とか「大物」なんて言葉にからきし弱いのだ。
余談ではあるけれども、自分の車のナンバープレートを「1091」・・・イレグイにしている人も居るほどだよね、Sサン(笑)。

そんな訳で、爆釣への旅は3時間チョイの小旅行。
土曜日ということもあり、そこそこの人出を懸念したが、道中の高速道路の混みようは意外なほど。休日の高速道路料金割引が適用されなくなるのを間近に控えた人たちが、早朝から出発した結果のようだ。

目的の川は、かなりの山奥と言っていい場所にあり、釣り人のキャパシティーはそれほど多くはない。土曜であるので、ある程度の釣人による釣場の重複は避けられないと覚悟していたが、国道から川へのアクセス道路に踏み込んでみると、こちらも意外なほど車の数が多い。他に逃げる川もないロケーションなので、ひとまず現地に向かうことにしてドンドンと標高を稼ぐと、どうやらこの道を利用するのは釣り人だけではないことに気づいた。かなり奥深くの林道に入っても軽四やらセダンやらの釣人ではないと推測される車が多いのだ。どうやら良い釣りのフィールドであるこの場所は、山菜採りのメッカでもあるらしい。話を聞けば、ハイシーズンは過ぎたもののまだまだ山菜は豊富であるという。

過去この川で釣り上げたイワナのアベレージサイズは25cm程度だろうか。個人的な好みでいえば、魚のプロポーションや模様がいちばん綺麗で均整の取れたサイズだと思う。そのサイズが爆釣であるなら、フォトジェニックなロッドを使おうと考え、バンブーロッドをケースから取り出して準備を始める。リールをセットしラインをガイドに通す段になって違和感。なんと最終のスネークガイドが綺麗さっぱり無くなっているではないか。半泣きでロッド交換し入渓。雨で軽い増水が見られるが、まだ「爆釣」の文字は頭の上にいる。イメージでは一投目から激しいアタック・・・のはずが、水面は割れない。いぜん尺イワナを釣り上げたポイントも何事もなくフライは流れる。「あのときは2匹のイワナが同時にフライに飛びかかってきたのに」とそのポイントに固執していると、少し上流で沢好坊サンがかがんでる。「お先に・・・」満面の笑顔で告げられればなにが起きたのかは明確だ。
まあ「爆釣」の川なので焦ることもないさと釣りを続けるが、なかなか魚の顔を見ることが出来ない。するとイカにもというポイントに差し掛かる。俗に言う「ここを流しても反応がなければ魚がいないノダ」と言い訳をする場所だ。水面を眺めつつティペットの結束の確認、フライのドレッシングをしていると、澄み切った水面でライズだ。「イタダキ!」てな気分である。一投目からフィーディングレーンに乗ったブラックパラシュートが消える、快感。少し小振りではあるが水中を右に左に激しく動く銀色の矢がさらに快感をあおる。手元まで残り5ヤードネットに手を伸ばそうかと思った瞬間、矢は小刻みな振動の陰影を残し岩の割れ目に消えた。これがこの日のバラシ連発の序章であることには気づいていない、この時には。

この場所では、底石の間から飛び出たイワナ、対岸の岩のエグレから浮き上がってきたイワナ、ことごとくフッキングするものの、ネットに収めることが出来ない。ところが魚の反応があるものだから最終的に7Xティペットに#20のフライまでサイズダウンして2匹のイワナを手中にしたが、その倍以上のバラシで未熟さを痛感した上に、今までのアベレージサイズにはほど遠いサイズが達成感を損なう。

頭の上を飛び交っていた「爆釣」の文字は、知らぬ間に水面に落ち下流の方向へ流されてしまったところで午前の部終了。
午後からは、取水堰堤から上流部を攻めることにする。取水堰堤より上流部は上下流間の標高差が少なく、いわゆる緩やかな流れで、エサ釣りの釣法でのポイントがほとんどないことから、魚が抜かれる数が少ないと考えられるため、期待大だ。一昔前は延々と続く足首の水深の流れを尺イワナが背鰭を出して泳いでいた・・・と言われる川。今回は雨後であるので足首の水深は膝下まで持ち上がっていたが、凹凸のない流れは軽い増水によってポイントを消し去ったように見える。そこで、倒木や大きめの底石に注視し、その下流を流す作戦をとってみた。流すといっても本当に流れに乗せてしまうとフライはF1カーのように目の前を行き過ぎるので、流れが複合し緩やかになった場所にフライを置くようにした。文字にすれば簡単そうでも実際に満足できるキャストは1/10程度。オマケに張り出した枝葉の下を狙うことによるライントラブルでストレスは貯まるのだが、狙ったポイントにフライを留めることが出来たなら、魚が顔を出す確率はかなり高い。しかし、その後のバラシとも闘わなければならないのが未熟さ故なのだが、フッキングした魚を下流に走らせてやればバラシが激減することに気づいた。
「もっと早く気づけよ」と自分を叱咤する頃には、膝下といえど流れの中で踏ん張ってきた下半身がだるくなってきた。わずかに残った岸の部分を歩くことがこれほど楽と言うことを再確認。
脱渓点と見定めた場所が確認できる頃には5匹ほど釣り上げる事が出来ていたが、いずれも20cm前後のサイズで、いまひとつ物足りなさを感じていた。そんな時に左岸ギリギリに突き出た岩とそのすぐ下流に沈み岩という好ポイントを発見。突き出た岩で流れが分断され緩やかになったところで沈み岩にぶつかり上向きの波を生じている。さらに沈み岩の下流側はエグレている。目標の流れとは違う方向の流れに乗ったり、沈み岩の上をうまくスルーできなかったりで何投目かにやっと狙い通りにフライを流せた。

ランディングネットの長径にわずかに及ばないサイズではあるが、今回いちばんのサイズをゲット。
写真撮影を済ませ、リリースするがイワナは逃げない。そこでもう一枚。

見事な保護色。
「爆釣」の川で小さな魚ばかり「爆小」と言うとゼイタクだろうか。
by s_1046 | 2011-06-05 17:01 | 釣行レポート | Comments(10)
撤収
例年、ゴールデンウイークを迎えるころ、高原は澄み切った空気に包まれ、新緑が眩しく、桜が花を結ぶ。
そんな高原を流れる渓流でのフライフィッシングは、何物にも代え難く、心が解放される。
今年もそんな場面を頭に思い浮かべ、スケジュールを組んでみた。
同行者が沢好坊さんなので、天気予報のチェックは特に念入りに、何日かある候補日の中から「この日は絶対に晴れる」という確信を持つことの出来る日を選んだ。

平野部でも山間部でもかなりまとまった雨があった三日後のエックスデー、朝起きると少し肌寒いが、空は晴れ渡り絶好の釣り日和。沢好坊さんの車に乗り込み窓外を見ると、民家の庭に設えられた藤棚の藤が、満開で藤紫が目に心地よい。春、藤紫を愛でることが出来る季節が訪れたとき、それは山間に流れる渓流では魚達が活動をはじめる時期が訪れたことを意味する。フライフィッシングの中でもドライフライを使った釣りを楽しむ季節になったと言うことだ。
いつもながら、藤紫を見ると心は渓流に飛ぶ。そんな訳で、ワクワクとした思いで出発することになった。

心配は、三日前に降ったまとまった雨。道中の車窓から見える本流はかなりの水量で、ところどころから本流に流れ込む沢の水量もかなりの量だ。しかし、確信を持って決定したこの日の天気はジンクスを破るものであるという思いは微動だにしない。

車の中で、目的地を絞り込み現地に近づくと、道路に設置してある気温表示が低い。7℃とか8℃と一桁の気温で、想定内下限と言ったところだろうか。とりあえず防寒の準備はしてあるので、少しくらいの寒さは大丈夫だ。

問題の水量は、道路脇を流れる川が支流となっても相変わらずだ。ドライフライの釣りをするならば、そのフライを流す、あるいは置き留めるポイントが消されるくらいの水量と強い流れ。川に入って遡行するには危険が伴うかも知れない。実際、餌釣師が歩道から下に流れる川に向けて竿を出している場面に出くわしたが、その態度は投げやりだ。まあ、当然と言えば当然で、とても釣れるようには見えないし、竿を出している本人も釣れるとは思っていないだろう。

最終的に目的とした川の周辺で様子を見る。思い浮かべていた高原のシチュエーションとの違いに少しばかり愕然としながら周りを見渡す。ふと横にある枯れ木に目をやると、木肌が桜のそれであることに気づく。よく見れば拳を力一杯握ったような固く閉じた蕾がいくつもある。その遙か向こうに見える霊峰の山頂から広がる雪の白も、初春のそれではなく、冬の景色。

入渓する川に着き、車止めのゲートから釣りを開始。水温は6.8℃。ドライフライで魚の注意を引きつけること出来る水温ではないと判断して、ヘアズイアーニンフを結ぶ。もっともドライフライを流しても、文字通り「あっ」というまに流れてしまうし、フライを留めるポイントもない。
かなり釣り上がっても、予想通り反応は皆無。それでも出発の時に見た藤紫を思い浮かべ、自身を叱咤し、心がくじけないように言い聞かせ続けたが、状況に変化無く時計を見れば正午を大幅に回っている。時間を決めて釣りをしていた訳ではないが、沢好坊さんとは阿吽の呼吸でお互いが見切りをつける時間というのが判っている。その時間から見れば、今日の私の釣りはかなりの長時間のはず。林道を歩き続けて車に戻ると沢好坊さんは車で運転席の背を倒し休憩中だ。

時間が昼を過ぎていたので、少し川から離れ暖かいラーメンを食べるために店に入り、一息つく。そして高原から少し離れた川に向かおうと店を出ると・・・、雨。
信じられない。
確かに曇り空で、少しばかり雨の気配もなくはなかったが、確信的なあの「晴れマーク」は何処に行ったのだ。
それでも「これは通り雨だ」とお互いを納得させるように次なる川に向かう。ところがフロントガラスを叩く雨粒が音を立てるほどになってきて、止む気配すら見せないぞとばかりに大きな黒雲が頭上を覆い尽くす。
こうなったら向かう先は決まったようなもんだ。

雨が強いのでバス停の軒先を寸借しウェーダーを脱ぎせせらぎの四季に向け撤収だ。

by s_1046 | 2011-05-01 14:39 | 釣行レポート | Comments(4)
銀化
年券を買ったものの、轟音を立てて流れる濁流を為す術なく眺めるだけだった10日前。その時に買った年券というのが長野県にある木曽川漁業協同組合のもの。ご承知のように木曽川は長野県木曽郡木祖村の鉢盛山を水源とし、いくつもの支流を集め、岐阜県、愛知県を経て伊勢湾に流れ込む総延長229kmの河川だ。数多くの宿場町を繋ぐ旧中山道に沿って流れる長野県下の木曽川は、西に霊峰御岳、東に木曽駒ヶ岳を主峰とする中央アルプスに挟まれた谷間を流れる形となっている。
木曽川漁業協同組合ホームページの渓流マップを見ればよく判るが、その管理する範囲は途方もなく広大で、フィッシングのフィールドとなる本支流は数限りないと言っても言い過ぎではないだろう。これだけの支流があると、その環境も様々で、少しの降雨で濁流となる川もあれば、岩盤に大岩を配した渓相でかなりの降雨でも濁りの入らない川もある。支流の水源が西の御嶽と東の中央アルプスとでもかなりの様相の違いを見せる。雨雲の位置によって支流の水量もかなりの違いが見られる事も多い。
今回の釣行では、呆けたように濁流を眺めるだけだった流れに入って、魚を釣り上げる事を目的としたが、その前に中央アルプスを水源とした流れにも足を踏み入れてみた。

花崗岩質のその川は、透明度が高く清冽な流れの川で、私が勝手に木曽美人と称しているタナビラ(アマゴ)が釣れる流れだ。今日は水量が多く、わずかに白濁し雪代の影響がかなり出ていて、水温も8℃前後と低めだったため、釣り上がることなくリベンジの川へ向かった。


現地に着くと、濁流を眺めた橋から見る渓は、あっけにとられるほど水位が低く、それはそれで困難な釣りを連想させるくらいだった。入渓ポイントを選ぶため車を走らせていると、軒先でウェーダーを干している地元の釣り人の姿があったので、図々しくも状況を聞いてみた。その結果、今年は冬が寒くまだ活性が上がってきていないとのこと。「例年の解禁直後の様相だから1ヶ月遅れかなぁ」という情報を貰うことが出来た。
ライズも勿論のことながらハッチも見られなかったが、高低差のあまりない緩やかな渓相の川なので、俗に言う大場所という大きな落ち込みや、淵もほとんどないためニンフで底を探るということなしに、ドライフライのみで釣ることにした。
本流との合流点から釣り上がり、ひとつ目の堰堤までは、魚の気配は皆無。フライにアタックする魚もフライの様子を見に来る魚も確認できず。流れに足を踏み入れても走る魚の姿もない。堰堤を巻いて再び釣り上がるも、状況に変化はなく、ふたつ目の堰堤に。そこには魚の匂いが・・・。
水量が少ないため、堰堤からの水が左右に分流された流れの左側に魚の居着きそうなエグレ岩。その岩の向こう側を目標にフライを投げ入れる。フライラインが岩にのりドラグを回避できる状況だ。おそらく狙った位置にフライは落ちているハズ。と考えていると、岩を回り込むようにこちらに向かってフライが顔を出し流れてきた。その確認ができた瞬間、水底から浮き上がる魚の姿。フィーディングのゆったりとしたフォームを見る限り、警戒心は薄く、本物のエサだと信じている様子で、合わせるタイミングさえ誤らなければ・・・と、瞬時に判断しロッドを立てる。

ネットインの瞬間は、アマゴと言うことは判断できても「なんだか綺麗じゃない」と思った。まるで管理釣り場のゾーキンマス。しかし撮影のためネットの中に横たえると、銀鱗がパーマークを隠している事が判った。まるで脱皮の最終課程のように見える。「これって、疑似スモルト?」などと考えながらリリースしたが、無知であるが故、疑問符は疑問符のままだ。

その後、比較のためにももう一匹と意気込んだが釣果なく、やはり疑問符のまま。
川の中は、まだ春になりきっていないのだと結論づけてとりあえずロッドオフ。
by s_1046 | 2011-04-20 22:13 | 釣行レポート | Comments(8)
年券
読みが甘かった。
先週の週末の釣行時に沢好坊くんと「来週も行こう」と相談がまとまった。
まあ、多少は天候の方が気にはなったものの、まさかね・・・と。

ところが、天気予報はジンクスに逆らえない。
金曜の午後からキッチリと天気予報どおり雨が落ちてきた。
沢好坊くんから「延期しましょうか」のメール。
しかしその時になっても、まさかね・・・の私であった。
シトシトと降り続いても降雨量はたいしたことなく、予報通りなら午後から晴れてくるじゃないか・・・と。
頭の中には、多少の増水はあるものの、雨上がりの渓でロッドを振る私がいたのだ。
毎朝の犬の散歩をしているときも、傘など必要ない状態で、天候の回復が早まったな、ニヤリ。という鈍さだったのだ。

ところが沢好坊くんが迎えに来てくれて、荷物を積み込むときにはかなりの本降りに。
まったく雨雲を連れてきたとしか思えないタイミングと雨粒の大きさ。

中央高速道路を走り、国道19号線に入った時には、完全に諦めましたね、釣り。
それでもココロのどこかには、まだ行けるんじゃないかという甘さもあり上松のコンビニで年券購入。今年から写真が必要ということで、写真持参でなかった私は、写真のない人は買えませんと言われたら、あっさりと退散するつもりだったけど「いいっすよ〜」という店員のコトバに5250円のお支払い。
綺麗なピンク色の木曽川漁協の年券は、相談の上、来週ご使用と言うことで(笑)。



その後は、あっちの川こっちの川と下見と称し、わずかに出来るんじゃないかというスケベゴコロを秘め移動を繰り返していたら少し早いが昼食の時間。
「幻の蕎麦」を食いに行くには丁度いい時間。

帰路はあちこち立ち寄りぃの、買い物しぃので、ずっと国道利用で、地元に戻り、トドメにタコ焼き買って花見をしながらタコ焼きで・・・これって、釣行記?
by s_1046 | 2011-04-09 20:14 | 釣行レポート | Comments(4)
早春
平野部では桜の花も見ることが出来る陽気になって、事実今日の集合場所である一宮市の光明寺公園駐車場界隈の桜も三分咲き程度ながら花を結んでいた。あと数日もすれば、一帯は桜色に染まり、人々の目を楽しませてくれることだろう。
そんな陽気とともに上昇するのがフライフィッシャーマンの釣りへの意欲だ。日中の最高気温が16℃とか17℃とかになって、天気予報で「日中は春の陽気でしょう」などというアナウンスが聞ける頃になると、街中のドブ川みたいな流れですらのぞき込まずには居られなくなってくる。
その意欲を押さえつけたままでいるというのは、けっこうなストレスを感じるものだ。それを解消するには山中を流れる渓流に立ち、フライを流すしかない。たとえその場所が冬の佇まいのままで春の息吹すら感じられないとしてもだ。

今日は釣友のgaryさん、沢好坊くんを誘って岐阜の渓流にストレス解消に出かけてみた。
高速道路をおりて、市街地で昼食を買い込んだりしているうちは「さすがにスズシイね」などという軽口を交わし、まだ余裕の見られた三人だが、車を山中に進め、路肩にしっかりとした雪のカタマリが見られるようになると、キッチリと寒さが襲ってきた。
車から降り、着替えを済ませ、渓に立てばそこには完全な冬がドッシリと存在しており、寒々とした景色が広がっていた。

岸は枯れて朽ちたススキの枝でおおわれ、目を癒してくれるはずの緑の木々も、木の葉を落としたままだ。
覚悟をしてきたものの、冬の装いを解いていない渓流は、水の流れる音が響くばかりで、我々に厳しい試練を与えることを務めとしているかのようだ。
丹念にフライを流すものの、水中からの生命の反応というものを感じさせてはくれないが、唯一春を予感させてくれたものがネコヤナギの木。

岸から水面にむけてせり出したネコヤナギの枝には、たくさんの花穂が陽に煌めき、とても美しい。そして、岸のところどころに芽を出すフキノトウの黄緑色も冬から春への季節の移ろいを訴える。

わずかながら、黒い体色のカワゲラが飛び交い、釣りへの期待を盛り上げてくれたが、水中に居るはずの渓魚たちの興味を水面に向けるだけのアピールには至らないようで、ライズは皆無だ。
まずはティペットの先に#16のフェザントテールニンフを結び水中を探る。反応のないまま徐々に釣り上げるウチに冬枯れの木立にフェザントテールニンフを奪われた。少しばかり水中でのアピール度を上げようと、#16のヘアズイヤーニンフに結び替えた後、かなりの深さを持ち、底には魚が居着きそうな石が魅力的に配置されたポイントに立つ。深場を探る事が出来る位置にマーカーをつけ直す。落ち込みの直下にフライを投じ、フライを底に向けた流れに飲み込ませる。これでフライは一旦川底を舐めてから、マーカーの動きに引っ張られるように浮き上がってくるはず。
こちらの意思がフライに伝わったのか、思惑通りのルートをフライがトレースした、と思った刹那マーカーが微妙な震動を拾った。ロッドを立ててフックアップの動作の直後、生命感のなかった水中から春が伝わってきた。

この時期としては、サイズ、体型共に申し分のないイワナが春の使者。
by s_1046 | 2011-04-02 21:49 | 釣行レポート | Comments(8)
憂終


今年のシーズンは、序盤から骨折やそれに伴う身体の不調、釣行予定日に巡ってくる大雨など、釣行を阻害する要素が次から次へと現れ、終盤になってやっと渓への意欲がかき立てられてのは、記録的な猛暑をようやく抜け出したかと感じられた9月。
一部の河川ではすでに禁漁期を迎え、人によってはシーズン中お世話になったアイテムのメンテナンスに取りかかろうかというこの時期に、可能な限り渓に立とうと心に決めた。

まずは、通い慣れた木曽の渓流に単独釣行した。
気温20℃、水温15℃の木曽の渓流は、日陰に入ると素晴らしく心地よいが、日の当たる場所にたてばまだ汗ばむ。しかし川岸を眺めるとススキの穂が風にそよぎ、コスモスの群生も揺れ、秋を感じさせてくれる。
前日の雨で、やや水位は高いものの渡渉が困難な程ではなく、さすがに流芯にフライを流し、その中から渓魚を引きずり出すという感じではないが、逆にイワナの居着くポイントが絞られるといった渓の状況だ。
比較的下流の堰堤のあるエリアから釣りはじめるが、いくつかある堰堤の上流部のゆるやかな流れの中から、目玉の大きさがやけに目立つ小さなアマゴがフライを咥える。幼い顔つきのアマゴには過剰なストレスは禁物だ、写真撮影もすることなく即座にリリースする。
釣り上がるうちに、渓相は上流部のそれに変わっていく。
両岸近くの落ち込みや、魅力的な底石が配置された流れを中心に、フライを流していくと、今度はイワナたちが遊びに参加してくれるが、コヤツらも目玉の大きさが目立つ幼稚園児たち。
まあ「今日は、こんなパターンで終わるのか・・・」と思ったところで、大きな流れ込みの瀬尻近くにあった底部のエグれた石の陰からゆるゆると影が現れ、フライを飲み込んだ。
まったくもって「イワナの家」と表札があってもおかしくない場所からの登場にロッドを持つ手がピクリと動いたが、さすがにある程度に成長したイワナは、高等教育がされており、いきなりフライを飲み込むことなくじっくり観察し、フライが行き過ぎようかと言うタイミングでフライの後を追うように水面に顔を出した。



その次に釣行を計画した祝日。
前日、前々日とかなりのまとまった雨が降り、ネットで調べる河川の水位も軒並み上昇しており同行を予定していた沢好坊氏と協議のうえ中止と決定。まあ、このコンビで幾度となく雨に立ち向かい、濁流の小渓流を唖然と見下ろすこと何度か、歳を経てある程度の分別がついたと自負す。

それでも最終的な禁漁までは、あと一週間ある。なんとかもう一度と、Gary氏を誘い釣行。
この日も木曽の山中で楽しもうと思っていたものの、前日にかなりの雨。急遽降水量が少なかった北へ向かうことにし、車を走らせる。
現地に着くと、禁漁間近と言うこともあるのだろう、平日にかかわらず、そこここに車が止まっており、川の中にはイエローやオレンジのラインが宙を舞っている。俺のラインは目立たないベージュだから間に入ってもよかろう・・・というレベルの話ではないので、上流部に車を移動させGery氏と上下流に分かれ入渓。素晴らしい渓相で、魚の居着くポイントに溢れている・・・が無反応。私にしては結構丹念に攻めているつもりでも無反応。Gary氏と合流し聞いてみると「シブイ」と返事が返ってくるが「ゼロだ」というと「えぇえ〜!」というかなり焦りをもたらしてくれるご返答を頂く。
釣果ゼロの私に場を譲って先行し釣らせて貰うが、面前の川面も気になるが、後ろのGary氏も気になる。たまに振り向くとカメラを構えていたりするからだが、あまりPhotoGenicでない私としてはコッパズカシイので勘弁してもらいたい(笑)。
車に戻って昼食を食べつつ世間話。ふたりの子供も独立し、お気楽なサラリーマンである私に比べ、Gary氏は学業まっただ中のふたりの子息を自営という自分の能力で養う実力派。同年齢でありながら背負うものの重さに頭が下がる。私など責任などというものが肩にのしかかる事態から逃げ回っているというのに。ただ、重いフィッシングベストを背負うのはそれほど苦にならない(笑)。
午後からは、午前中より下流を釣ることにしたが状況はそれほどの変化がない。なんとか小さなイワナを手にすることが出来たが、即リリース。一度だけ大きなイワナに口を使わせることに成功し、形勢大逆転と思ったのは、わずかコンマ数秒。この日頻発したすっぽ抜けでチャンスをフイにしてしまう。バーブレスフックのせいだとする言い訳も、Gary氏に即座にそれもキッパリと否定され何も言えない。
それほどの距離を釣り上がっていないにかかわらず、そろそろ膝が笑い出してきたので、Gary氏の後ろに回りこみ勇姿を撮影しながらのんびりと釣る。

脱渓のポイントまで来たので、車まで戻り「これからどうしようか」と相談。この場所に来るときにチラリとライズを確認した本流との合流点近くの堰堤が思い出される。いわゆる本流差しという本流を嫌った魚や産卵を目的とする魚が差してくるという場所らしいので欲が出てきた。そのポイントに向かい入渓しロッドを振るものの、完全な沈黙にお手上げ状態だ。さらに護岸のコンクリートの斜面を滑り台よろしくズズッと降りたときに臀部に嫌な感触を覚えた。触ってみるとかぎ裂きの下にサポートタイツの手触り。

やっちまった。
有終(の美)ならぬ憂終のシーズン最終釣行。



by s_1046 | 2010-09-30 21:28 | 釣行レポート | Comments(8)
炎熱
前回の釣行から随分と時間がたってしまった。負傷が癒えたと思うと、その負傷により歩き方が悪かったのか、次々と別の場所が痛み出すという悪循環。そうこうしている間にシーズン盛期も過ぎて禁漁が目の前に迫ってしまっている。身体の方からはGOサインが出ないにもかかわらず、通勤に使う堤防道路を通るたびに思わず川の流れを見下ろす毎日。堤防にある空き地に車を止め澱んだ流れを見つめることも二度や三度ではない。「愛知県の明日の最高気温は38℃」という天気予報を聞いた瞬間、明日は川に行こう、と思い立ったのは必然なのだろう。

しかし、源流域のハードな釣行はかなりの無理があると判断。ココロのリフレッシュに重点を置いたリラックスした釣行にしようと思った。そこで思い立ったのが"Steering&Rod"大作戦。大作戦といってもそれほどオオゴトな事ではない。ステアリングを握りドライブを楽しみ、渓に立ち竿を振るのを目的にしようというだけのことだ。前日の夜、ほとんどの荷物をMercedesSLKのトランクに放り込み準備は完了だ。

高速道路に乗り入れ iPhone4 の iPod アプリを起動し、脱力系ボサノヴァと勝手に名付けた Sotte Bosse を選曲し聞き慣れた J-Pop を口ずさみながらオートクルーズでゆったり走る。
高速道路から一般道、そしてワインディングロードに。いつものジムニーでは青息吐息の急坂も軽いアクセルワークで苦もなく登っていく。登りのタイトなコーナーもアクセルを開き突入し、ゆるやかなアンダーステアを楽しみつつ、クリッピングポイントを超えた直後からさらにアクセルを開くと、クンッという感じで車体後部が沈み込む。低音の排気音と共に一気に直線部分を上り詰めると次のカーブだ。そんなことを繰り返し峠を越えると釣りのフィールドだ。



下界とは異種の空気を感じる山間のフィールドは、気温にして10℃程低いが、残暑が激しい昨今は直射日光にさらされる部分に立てばそれだけで汗が頬をつたう。しかし周りを見渡せば確実に季節は移ろっているようで、雲ひとつない青空を背景にススキの穂が銀色に輝き風にそよいでいる。そして清冽な流れの中に足を踏み入れる。そこに自分が置かれているだけでも精神が解放される気分になれるのがフライフィッシングの素晴らしさの一部分だ。堤防道路に車を止め澱んだ流れを見下ろしていたときに求めていたのはこれだったと強く感じる。



ところが肝心の魚の姿をなかなか見ることが出来ない。格好を付けて「リフレッシュ出来ればそれでよい」などという美辞麗句はロッドを振り出した瞬間から消え失せている。魚の姿を見ることが出来ずにいることにかなり苛立つ自分を感じて笑えて仕方がない。笑いが苛立ちを抑え、それがロッドから先端に結びつけられたフライに伝わったのか、ボチボチと魚がアタックしてくるようになってきた。



このまま夕闇が訪れる頃合いまで続けていれば、もっとサイズアップは望めただろう。しかし、数尾の渓魚とのやりとりを楽しんだ今、ロッドオフとしよう。
そして炎熱の街に戻るのだ。


by s_1046 | 2010-09-06 23:23 | 釣行レポート | Comments(6)