土曜日の早朝、というより金曜日の深夜、ラジオではDJが「今夜は・・・」などと話している。
その深夜、いつもの昼時とは違う顔を見せた交通量の少ない国道を走る。 釣人である運転席でハンドルを握る私の感覚としては早朝なのだが、日の出までおよそ3時間の時間帯なら深夜もやむを得ないなと、妙な納得をしながら待ち合わせ場所に向け、浮き立つような心を反映してか自然と力の入る右足に呼応して車が加速をする。 今日同行してくれる沢好坊さんの自宅に着くころには、お約束の雨が降り出す。 彼に言わせれば「織り込み済み」の天気も、膝痛を抱える私には心を重くする要因だ。 予報によれば、今日は北に行くほど低気圧から離れ、降水確率も低いらしい。 目的地は、分水嶺をはるか北に越えた高原の中を縫う渓流。 天気予報を素直に信じて、高速道路を北に向かおう。 高速道路を離れ、国道を更に北に向かい、日本海まであとわずかとなった場所で幹線国道から離れ、峠を越える。 何とかたどり着いた目的地の渓流に架かる橋のたもとには、すでに先行の車の存在。 釣場所を求め、未舗装の林道に乗り入れれば、いやがうえにも気分は盛り上がる。 ここまでのアクセス途中、分水嶺付近で出会った激しい雨も、少しばかり落ち着き霧雨に様相を変えてくれた。 雨具の上にベストを纏い、私好みの流れに身を置くと、心地よい至上の開放感に浸かることが出来る。 「この気分が味わいたくてこの釣りをしているのだ・・・」というと、格好をつけすぎだ。 なにせ、この高原を流れる渓流、初夏には「瀬からボンボン」と岩魚が・・・それも、尺をわずかに欠けるのがアベレージサイズ、という釣友の言葉につられて、この場所に来たのだから。 山中の高原を流れる渓流だけあって、ほとんどが膝下の水深で、言ってみれば「瀬だらけ」の場所で「瀬からボンボン」なのだ。 早速ロッドを繋ぎ、入渓する。 入渓点から少しばかり釣り上がった場所に、この流れにはめずらしい深場のあることは林道から見下ろした時、見るからに魚の居つきそうな場所だとほくそ笑んでいた。そのことを思い出しつつフライを流すと、水底からふたつの影がほぼ同時に浮き上がってきた。 ![]() 初夏のアベレージサイズには遠く及ばないものの、綺麗な岩魚を釣り上げて頬がゆるむ。 また、ゆるんだ頬は、これから続く一日の釣りを思い描いた時の「爆釣」という二文字が脳内を駆け巡った結果の反応でもあった。 普段なら鬱陶しい、風に乗って吹き付ける霧のような雨粒ですら心地よい。 上流を眺めると、この先「ボンボン」と岩魚が飛び出してくるであろう「瀬」が続いている。 という快感は、ここまで。 先ほどまで心地よいと感じたこの雨粒を鬱陶しいと感じるのには、それほど時間を必要としなかった。 食事と軽い午睡の休憩を挟んだ午後も状況が一変することもなく、釣りではよくあることなのだが「昨日の川と今日の川は違う」を地でいくような反応のなさが、うらめしい。 最終脱渓点と考えていた橋のところに差し掛かったとき、上流方面からフライパッチにびっしりとフライを付けたベテランFFMとみられる方とお会いし挨拶を交わす。 静岡から毎月のようにこの川に来ているというこのFFMの言葉を借りれば「6月は凄かった、7月もそれなり、今日は全然ダメ」。 6月の「瀬からボンボン」は、事実とのこと。驚くほど釣れたらしい。 我々は" Bomb! Bomb! "を期待して出かけた、しかし結果はいつものように「凡凡」。 何組かの先行者がいるこの川を、「穴場」と言った餌釣りの若者に出会った早朝、この結果を覚悟しておくべきだったと気づいたのは、落胆の後。
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