日和

灰色の雲が低く垂れ込め、周囲の景色はモノトーンの・・・まるで水墨画の世界。
今すぐにでも空から雨粒が落ちてきそうだ、ひょっとしたら雪になるかもしれないな。
一夜を過ごした温泉の窓から眺める風景はそんな感じで、身体を芯まで温めてくれた川岸の露天風呂から立ち上る湯気が風情をかき立てる。
だけど、今日乗ってみようと思った絶景のロープウェイへの搭乗はどうしたものか。こんな天気では山頂から周囲を見渡しても真っ白な世界に違いない・・・。

そんな奥飛騨を訪れる観光客からみれば「厄日」のような日が、眼下を流れる「蒲田川」でフライフィッシングを楽しむ釣り人たちにとっては「蒲田日和」と言っていいほどの絶好の釣り日和なのだ。
膝まであるような深さの川岸の雪をかき分けながら流れに向かう。よく見れば昨夜のうちに羽化したと思われる蜉蝣の亜成虫のシルエットが積もった雪の上のあちらこちらに・・・というよりもビッシリという表現が似合うほどたくさん灰色の影を残している。
もう今日の釣果は約束されたような気分になり、流れを見つめつつフライを結ぶことになる訳だ。

午前5時、約束の場所に到着するとgaryさんはすでに到着しており、気合いの入り方が窺い知れる。
今回は当初garyさんと沢好坊さん、そして私の3人での釣行を予定していたのだが、直前に沢好坊さんから「仕事の都合で行けない・・・」と連絡が入った。「どうしましょうか?」とgaryさんにお伺いをたてると「ワタシはすでに蒲田モードです」と素早い返事。
私と沢好坊さんが一緒に釣りに行くと、嵐、吹雪、暴風雨。などというジンクスがまことしやかに流れているが、今回はそれだけは回避出来そうな雰囲気で、車が北上して行き分水嶺を越えるあたりでは「蒲田日和」をうかがわせる雲の低さで、車内の話題も浮かれていた。
現地に到着し、入渓点を探るが、結構どこも空いている。今年の蒲田はキビシイとの話は聞いていたが、それでも予報で好天が告げられ、数日前に上流部からの放水が止められたことにより、川の水温も上昇、安定した頃だろうと推測された週末の土曜日にこの人の少なさは意外だ。

まだ羽化が始まる時間でもないということで、上流部に入渓を決め、ウェーダーに着替える。もちろん腰にホッカイロを貼りサポートベルトだ(笑)。
その頃は薄曇りの空模様で「蒲田日和」というよりも少しばかり天気がいいかなとという感じだったが、釣りを始めるとみるみる空模様が・・・雲ひとつない好天、いわゆる「観光日和」に変わっていった。

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入渓直後の装い  蒲田の標準仕様だったけど・・・



私のウェーダーはゴアテックスのチェストハイなので特に蒸れることもなく、快適に釣りが楽しめる装いのはず。ところが釣りをしていても汗が噴き出てくる。インナーとして着用しているアンダーアーマーのコールドギアが性能発揮しすぎ。まずはアウターのPatagoniaパフボールをベストの背面ポケットにしまい込み、ウールのニットキャップもお引き取り願う。
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雪の上にベストを放り投げ汗をぬぐう



garyさんも暑い様子でかぶっていたキャップはもう脱いだようで、頑張ってキャストを続けている。
釣りの方と言えば、これだけ反応のない日も珍しいのではないかというくらい流れからの応答がない。応答といえばピックアップすると毎回のように川藻がフライにまとわりつくことくらい。フライの流れる時間を稼ごうとするとついつい手前のラインが沈んでしまい、ピックアップするときに沈んでいたラインの位置をトレースするように動くフライが流れの中に沈んで川藻がひっかかりリーチパターンのような姿に変わり果てて手元に届くと言うわけだ。
ラインに固形フロータントでドレッシングを施し沈まぬよう、沈まぬようと呪文をかけても完全に川藻の呪縛からは逃れられない。指先を緑色に染めながら上流を目指す。
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コットンのネルシャツを袖まくりして頑張る



少しでも風があると川岸の雪をかすめて吹く風が心地よいはずなのに、ソヨとも吹かぬ風を恨めしく思いながら岩を登り、川を渡り距離を稼ぐが状況に変化は見られない。もっとも風が吹いたら吹いたで文句を並べるのだろうが・・・。
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garyさんも同じような状況で、ココロが折れそうだ・・・と



そうしているウチに、先行していたgaryさんから先行者発見の知らせ。このキビシイ状況は先行者のせい?とも思いたいが、活性があれば先行者の一人くらいは問題ではないほどのアビリティーを持った川なので、強い日差しと暑すぎる気温が問題なのか。

どうやら脱渓点が見えてきた、と同時に槍ヶ岳から中岳が一斉に誇らしげに偉容を晒す。雲ひとつない青空に浮き上がる山脈の姿はとても美しい。「だけど、そうじゃないんだよな」とつぶやきながらフライを流す。
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雲ひとつない青空が恨めしい



深山荘まで辿り着き脱渓。アルプス広場まで戻りgaryさんの"OUTLANDER" PHEVのAC100Vコンセントを利用してポットに湯を沸かしカップラーメン。とても便利だ。でも、冷たい蕎麦でもよかったかな・・・とも思ってしまう。

釣りの続きを・・・と川に入ると、一昨年コカゲロウのボコボコライズがありながらコテンパンにやられたプールで竿を出している釣り人が竿を曲げている。色めき立つがライズがあるわけでもないらしい。それにその場所に向かって対岸からキャストするほど図々しくもないし、場所を譲ってくれる気配も皆無なので川面を眺めながらあっちこっち移動するが、一度折れたココロはなかなか元に戻らない(笑)。
周りをと見れば、ごくわずかのライズ待ちの釣り人を除いて多くの人は帰り支度だ。
私も個人的に翌日の講習会の講師を務めなければならない事情が頭から離れない。そう、準備不足なのだ。なので少し早い時間だがgaryさんにお許しを願って「観光日和」に豹変することにした。
ガクガクする下半身を引きずって「平湯の森」へ行こう。



ということで、ご推察通り魚の写真のない釣行記。

追記:講習会はズタボロでした(涙)





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Commented by gary at 2015-04-06 15:57 x
年に一度の蒲田詣でということであきらめもつきますが、どうせなら沢好坊くんも道連れにしたかったですね(笑)
次回の大名釣行が楽しみです。
Commented by s_1046 at 2015-04-06 16:22
温泉と旨いものがあるところへ行きましょう! ドタキャンは高くつくということを沢好坊くんに教えなきゃ。
なんて言うともう二度と付き合ってくれないか(笑)
by s_1046 | 2015-04-06 14:39 | 釣行レポート | Comments(2)

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