水難

深夜、耳元で微弱な交流ノイズ。
「蚊だ」と思ったときにはすでに手足に数カ所の掻痒感を感じた。わが家では蚊に刺された時にはその部分にセロテープ、と決まっている。何故だかわからないがテープを貼って数分以内には痒みは消え去る。おそらく空気との接触を遮断することに意味があるのだろう。とにかく効果は絶大なのだ。難点と言えばセロテープを貼ったことを忘れて出勤したり買い物に出かけたりすることくらいか。ということで、階下でセロテープ処置を施し電子蚊取り機器をセットして再び入眠。寝付きはよい方なので労なく眠ることが出来たが、しかしそれだけでも早朝の覚醒には影響を与えたらしく、起床の目的とした時間から一時間ほど遅れて目が覚めた。
ルーティンワークの犬の散歩を済ませ、前日用意しておいた荷物を車に積み込み出発。
勇んで高速道路に乗ったものの釣り用の軽自動車は80km/hあたりで、この車特有のジャダーと呼ばれる振動が発生するので、その速度を少しこえた振動の発生しない速度をキープしつつ走らせる。ところが長い上り坂に差し掛かるとみるみる速度は低下、こんな時はどうするかと言えば、エアコンスイッチOFFだ。再び下り坂に入って速度があがればスイッチON。なかなか忙しい高速道路運転テクニックなのだ。高速道路を走ること30分強、一般道に移ってさらに1時間強で目的地に達した。
目的とした渓は、ずっと前にドライブで通りかかり、その渓相に惚れ込んで以来勝手にホームリバーと決めつけた渓だ。車止めのゲート前には先着の車はなく、とりもなおさず先行者は居ないと言うことになる。ここ何年かは、静岡や横浜のナンバーを付けた車がゲート前に止まっていることも頻繁で、平日といえどもそれは否めない。それはこの水系に生息する美しいヤマトイワナを釣るためだと、以前話した関東のFFMが言っていた。まずは、ゲートより入渓可能で一安心。釣行に使える時間が限られていることと、奥深い渓の上流部まで林道を歩く体力的根気がないためだ。

ゲートから脱渓点の滝までの区間は、超シビアな釣りが予想されたが、入渓するなり小さなタナビラが釣れる。色白のボディーに淡いパーマーク、仄かにちりばめられた朱点が幼さを強調しているようだ。ネットも使わず写真も撮らずリリース。すぐにリリースしなければ・・・と思ってしまうような可憐な魚だ。
入渓してすぐの場所に森林鉄道の橋脚と軌道の一部が現れる。大正5年に営業を開始したという森林鉄道は地場産業である木材の運搬や地域住民の足として大活躍したが昭和の後半になってトラックがその役割を引き継ぐと軌道は撤去され、渓の一部に橋脚を残し往事を忍ぶことが出来る。
f0022103_18371785.jpg
渓で釣りをする人間にしかその姿を見せることのない森林鉄道の軌道



その橋脚の下を過ぎたあたりで、思わぬ珍客と遭遇した。岩と岩の切れ間で日向ぼっこをしているようで、とてもリラックスしている感じのヤマガガシ。いままでこんな綺麗なヤマカガシを見たことは記憶にないので、記念に写真でもと思った、近づくのはコワイのでズームで撮影。撮影してから思い出したジンクス。蛇を見た日は釣れない・・・。
f0022103_1934548.jpg
よく見れば美しいけど、手を伸ばす気にはならないなぁ



ヤマカガシとの休憩を終えて再び釣りを始める。それまでもチョコチョコと反応はあり、小さなタナビラやヤマトイワナは釣れたものの、写真として記録に残そうというフォトジェニックな魚体にはお目にかかれないでいた。やっぱりゲートからの入渓はシビアだと後悔しながらも青空の下で渓の上を流れる涼風に気分を開放していると、緩んだ緊張を見透かすかのように「バシャ」ときた。跳ね上げたロッドの先には魚の感触はなく、後ろの木立に絡んだフライが揺れている。釣れなかっただけに、今までのような小さな魚ではなかったという確信に近いモノが心にわだかまりを残す。
その落胆が、体に伝わったのか、はたまたすでに疲れていたのかちょっとした深みを渡渉の最中、足を乗せた瞬間崩れる岩に反応できず見事に沈。とりあえず胸の位置まで水に浸かってしまうが第一の感想はと言えば「気持ちイイ!」。濡れてはいけない装備は防水バッグに入れてあったし、ほぼ万歳ポーズで入水したのでロッドもリールも無事。そういえば以前この渓で派手に転けた時は、ロッドは折れるしリールは破損しスプールが回らなくなったことを思い出しながら、大岩の上にシャツを干し、その横に寝転がる。やはり風が気持ちいい。
ダクロンのシャツはあっという間に乾き、気を取り直して釣りの再開。沈によって先ほどのわだかまりは霧消したようだ。フライを流した瀬尻で明らかなアタックではない、不自然にフライが沈むと言うような反応にも対応でき20cmほどのイワナを釣り上げた。この渓に棲む魚全般に言えることだが美白だ。タナビラもヤマトもクッキリした斑紋を体側に残すのではなく、どちらかといえばボンヤリとした淡い印象の魚が多いようだ。
f0022103_19471252.jpg
背中もグリーンバックというより流行のシャーベットカラーのよう




天気予報は、曇り一時雨。釣り日和かなという感じで居たところ、渓に入れば木々の間から見えるのは青空で、予報は外れたかと思われた。しかし、天気予報の一時雨が半端ではなかった。イワナを釣り上げた頃から雲が多くなってきたなと感じてはいたが、脱渓点の滝に差し掛かるカーブにきた頃にはポツポツと雨粒が落ちてきた。それでも釣りを続けていたのだが、様相は急を告げ釣りどころではないぞという感じになってきた。流れているフライに雨粒が命中すると一発でフライが撃沈するほどの大粒になってきたのだ。
こうなると、前が見えない。脱渓点は目の前なので向かうが、もう全身ビショビショで、先ほど乾かしたシャツも沈した時よりずぶ濡れになっている。林道までの崖を登るが、そこも人の踏み跡と言うよりも沢が流れ込んでいるという感じで、滑る。林道に上がった頃には泥だらけなのだが、雨がシャワーのように汚れを落としてくれて好都合だ。眼下の滝を見れば、明らかに水量は増え、さっき渡り歩いた岩のいくつかはすでに水没している。
林道を歩いて車まで戻っても、空からの雨粒はそれほど衰えを見せないので、濡れたまま車に乗り込み屋根のある場所まで撤退。本来ならもう一カ所のぞいてみたいところもあったのだが撤収を決め、国道に出ると「どこで雨が降ってんの?」くらいの曇天で気抜けするが、本流に注ぐ支流を見れば撤収は正解だったかな。
[PR]
Commented by naru-kato at 2012-07-12 20:30
こんにちは、この渓行ってみたいなぁ モノクロの写真イイですね、どこの渓か想像出来ます、多分いつも通り過ぎてます。しかし蛇は嫌です、苦手です。
naru
Commented by gary at 2012-07-12 21:04 x
マイペースな釣りを楽しまれたようで、うらやましい限りです。
ひょっとしてここは以前に案内していただいた溪なのかな?
単独では余り無理をしないように!
Commented by standy at 2012-07-12 21:23 x
naruさん、こんばんは。そうですね、開田が目的地だと通り過ぎることになりますね。この谿はとても奥深いので最深部までいったことがありません。木曽は広いのでいろんな渓があって楽しいですよね。蛇はこちらから何もしなければ大丈夫ですよ。私は猿とばったり遭遇した時の方が怖かったです(笑)
Commented by standy at 2012-07-12 21:25 x
garyさん、ども。そのと~りです。私が派手にこけてロッドを折った場所です。あんときゃ痛かった~。
Commented by amago_meister at 2012-07-12 22:22
セロテープ、今度やってみます。。。
Commented by standy at 2012-07-13 12:26 x
セロテープは蚊には効きますが、オロロには自信ないです(笑)
Commented by lefty_haru at 2012-07-13 14:43 x
当方のじむにぃはエアコン壊れたままなので坂道でも登ります(笑)。80kmあたりの振動は感じないです。standyさんのじむにぃの前の型JA11なのでちょっと構造がちがうからなのか?。オール板バネのガツンショックがたまらんのと90km越すと壊れるんじゃないかくらいうるさいですけど。それより四駆で走るとフエルメーターがみるみる下がるのが悲しい。
Commented by standy at 2012-07-13 16:54 x
haruさんのじむには、エアコン壊れとりますか・・・。スイッチON、OFFという煩わしい手間をかけさせないイイコですな。振動は直す方法が有りgaryさんにその方法を教えて貰ったんですがまだ実施しておりません。目標の20マンキロまでは頑張るつもりです。
Commented by sawakobo at 2012-07-17 07:47
stanサン、お疲れ様でした。
遅きに失した感のあるコメントで申し訳ないです。

この渓に通い始めた当初は、下の方でもネットに収まりのよい、適度なサイズのサカナが遊んでくれましたよね。
最近は、そのネットが大き過ぎます(笑)
でも、美形なタナビラに会いたくて、いつも足を運んでしまうんですよね。

しばらく、渓魚と会ってないので、週末に出掛けようかな。
また、よろしくお願いします。
by s_1046 | 2012-07-12 20:14 | 釣行レポート | Comments(9)

FlyFishing Logdiary


by s_1046
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30